マーレのターボチャージャ

ターボチャージャ:成長を続ける事業部門 …

ターボチャージャは、性能の向上、燃費改善、排出ガスの削減を実現するためのカギを握る技術です。直噴ディーゼルエンジンに搭載した場合、同様のポート噴射式ガソリンエンジンと比べて、燃料消費量を最大25 %削減できます。そのため、ほとんどの市場セグメントでこのシステムが普及するようになりました。ガソリンエンジンはダウンサイジング化される傾向にあり、同じ出力でも排気量は小さくなります。これを実現できるのは、ターボチャージャのおかげです。エンジンの出力 / 排気量比が高い場合、エンジンに供給する空気を増加させなければなりませんが、そのためには必ず過給が必要となります。そこで、ターボチャージャ搭載のガソリンエンジンの数は必然的に、世界中で大幅に増加しています。

10年後には約1億6,000万台の乗用車と約1,600万台のトラック(>3.5トン)にこの技術が搭載され、その増加傾向は続くと専門家は見ています。それにより、ターボチャージャセグメントは世界中の自動車産業で最大の成長市場になるでしょう。

ターボチャージャを搭載した車両が増えることで、アフターマーケットの販売ポテンシャルも大きくなります。ターボチャージャの寿命は通常はエンジンのそれと同じですが、車両の不適切なメンテナンスや不十分な潤滑、高すぎる排出ガス温度などによって、早期に交換しなくてはならない不具合が発生することがあるからです。詳細については、保守とお手入れをご覧ください。

もっとも、販売のチャンスが広がるのは、ターボチャージャそのものだけではありません。サービスや営業に力を入れている自動車整備工場では、フィルタの交換など、サービスや修理分野でさらなるビジネスチャンスが期待できます。

ターボチャージャは、エンジン寿命と一致するように設計・製造されています。しかし、排気ガスシステム内のハイテクコンポーネントは、タービンに侵入する異物、汚れたオイル、オイル供給の不具合や高すぎる排気ガス温度といったさまざまなリスク要因にさらされており、こうした要因が故障につながる可能性があります。そのために極めて重要になるのが、メカニックのノウハウです。そこで、効果的な交換を実施する上で実際に役立つヒントを以下にご紹介します。

重要:分析

修理が成功する前提条件となるのは、不具合の原因を特定し、それを解消することです。これを行わないと、ターボチャージャを新しいものに交換しても、短期間のうちに再び故障する可能性があります。

必須:クリーンさ

タービンやコンプレッサホイールは極めて高速に回転するため、最小の異物であっても発射物のように作用します。そのため、エアフィルタは必ず交換する必要があります。同様に、エキゾーストパイプ内のすべての異物除去を含め、インタークーラを往復するインテーク / フレッシュエアシステム全体を念入りにクリーニングすることも重要です。

必要:潤滑

ロータシャフトベアリングには、エンジンオイルが必要です。

ヒント:新しいターボチャージャを取り付ける前に、少量のエンジンオイルをオイル入口穴に注入し、その上に清潔な布を被せてください。その後、圧縮空気ガン(図参照)を短く噴出させ、ベアリング内にオイルを噴霧します。ターボチャージャを取り付けた後、オイル供給を接続する前に、さらに少量のエンジンオイルをオイル入口穴に注入します。この作業を楽に行えるよう、マーレ ターボチャージャのシールセットにはエンジンオイル入りの小さなシリンジが同梱されています。

エンジンオイルの出入り

ターボチャージャには潤滑 / 冷却を行うためのエンジンオイルが必須で、これはオイルポンプからエンジンに供給されます。このオイルは、オイルリターンパイプを通って回路に回収されます。オイルがスムーズに流れるよう、すべてのオイルリターンパイプとクランクケースの接続ではねじれがなく、内側に付着物がないようにしてください。リターンフローが妨げられてしまうと、これによって閉塞が生じ、ターボチャージャはタービンとコンプレッサホイールを通じてオイルを失うことになります。重大なエンジン故障を含め、差し迫った影響を与えかねません。

ヒント:新しいインタークーラと同様に、新しいオイルリターンパイプを購入するのも有効な対策です。

その他のヒント:クランクケースには過剰な圧力がかからないようにしてください。クランクケース通気口が汚れた状態で過剰圧力が発生した場合、ターボチャージャへのオイルリターンフローが妨げられてしまいます。オイルゲージチューブの圧力計でわずか数ミリバールでも過剰圧力が測定されると、ターボチャージャはタービンとコンプレッサホイールを通じてオイルを失い始めます。

すべてしっかりと接続されているか?

ターボチャージャ内をオイル、エア、排気ガス、さらにタイプによっては冷却水が、クリーンで安全に損失なく流れるよう、ターボチャージャの連結部はすべてしっかりと接続されている必要があります。そこで、マーレの各ターボチャージャには、正確にフィットする取付部品(スタッドボルト、ナットなど)とシールで構成される最適な取付けキットが用意されています。

重要:新品のガスケットセットを必ず使用してください。古いガスケットを絶対に再度使用しないでください。古いガスケットは変形したり、穴が空いていることがあるため、必要なシール性能は保証されません。また、シーリングコンパウンドやリキッドシーラーもターボチャージャには使用できません。シーリングコンパウンドによって穴断面積が小さくなったり、シーリングコンパウンドの一部が遊離して、オイル供給の妨げになる可能性があります。また、その結果、ターボチャージャの重大な損傷につながります。

シールドカバーが付いているか?

オイル供給とリターンラインの多くは、ターボチャージャのすぐ近くに配置されます。そのため、自動車メーカーはオイルパイプをシールドカバーで保護する対策をとっています。そこで、ターボチャージャを交換する際には、シールドカバーが付いているか、また損傷の有無もチェックする必要があります。

新しいターボチャージャ – 新しいオイル

新品のターボチャージャには、新しいオイルとオイルフィルタを必ず使用してください。これにより、オイルシステム内に残る異物を除去し、新しいターボチャージャの損傷を防ぐことができます(古いターボチャージャの故障は、異物や微粒子の侵入が原因となっている可能性があります)。

ヒント:「大は小を兼ねる」という言葉は、オイルレベルに関しては当てはまりません。エンジンのオイルレベルが高すぎると、エンジン圧縮比が乱れるからです。それにより、エンジンオイルがターボチャージャのタービンやコンプレッサに入り込み、インタークーラにたまります。このオイルがエンジンに吸引されて再度燃焼すると、エンジンで重大な損傷が発生する可能性があります。

ポンプの始動

ターボチャージャの取付けが完了し、オイルと、場合によっては水のライン、エアと排気ガスのラインがターボチャージャに接続された時に、オイルの交換と冷却システムの通気を行うことができます。

その際、フューエルポンプのヒューズまたはリレーを取り外すなどして、エンジン始動時のイグニッションを防ぐ必要があります。その後、スタータを使用してオイル圧力が高まるまでエンジンをかけ続けます。エンジンを初めて始動させる場合には、確実にオイルを供給できるよう、スロットルを開く前にエンジンを2分間アイドリングさせたほうが良いでしょう。

ネジの緩み?

すべてのネジや連結部がしっかりと接続されており、漏れがないことを確認する必要があります。

ヒント:約20時間または1,000 km走行した後で、再度すべてのネジがしっかりと固定されていることを確認してください。

長距離走行

どのエンジンにとっても、より長時間の走行はプラスの効果があります。ターボチャージャを搭載したエンジンは、コールドスタート時に燃焼しなかった燃料や凝縮水がエンジンオイル内に捕集されるため、短距離走行にはあまり向いておらず、オイルの減摩特性が悪化し、潤滑油膜の負荷能力が減少します。この望ましくない特性は、オイル温度が80℃以上になった場合にのみ解消します。短距離走行のように、長期間にわたってオイル温度がこのレベル以下となる場合には、ターボチャージャにリスクをもたらすことになります。クランクシャフトやカムシャフトのベアリング、ターボチャージャのロータシャフトの摩耗が予想されるほか、外気温が低い場合には、エンジンオイルのエマルジョンや、ターボチャージャのオイルリターンパイプ内やクランクケース通気口の凝縮水が凍結し、エンジン圧縮比の異常につながる可能性があります。

バイオディーゼル?エンジンオイルとターボチャージャのリスクが増大

植物油は蒸発しないため、燃焼しなかった植物油はエンジンオイルに捕集されます。一定の濃度を超えると粘度が高くなり、短時間のうちに潤滑システムが壊れてしまうおそれがあります。そのため、燃料として植物油を使用する場合には、オイルを交換する頻度が高くなります。

ロータシャフトベアリングを潤滑するため、組み付けの前に少量のエンジンオイルを注入します。

オイル入口穴の上に清潔な布を被せます。

圧縮空気を吹き付けて、ベアリング内にオイルを噴霧します。

カスタマーケア:有益な情報
最後に、専門スタッフからのアドバイスをいくつかターボユーザーにお伝えします。これは、満足度の高いドライバーはリピーターとなる可能性が高いためです。

アイドリングによる予防:走行前にエンジンを約30秒間アイドリングさせると、ターボチャージャにオイルが確実に供給されます。また、高速道路などで高速で走行してから30秒間アイドリングすると、ターボチャージャが冷却されます。

短距離走行を補う:短距離走行が主となる場合には、エンジンオイルの再生を促すため、週に1回、より長い距離を走行することを推奨します。

ヒーター出力の最適化: 冬季には、エンジンを動作温度まで早く上げるため、3分待ってからヒーターをオンにしてください。そちらの方が、ヒーターの暖まりも早くなります。

Mahle exhaust-gas turbochargers

アフターマーケット向けのマーレのOEテクノロジー

マーレは、内燃エンジンとエンジン周辺機器の分野で技術をリードするシステム開発企業の1つであると同時に、高負荷のターボチャージャ部品の開発・製造に関して、世界中の自動車 / エンジンメーカーの長年にわたるビジネスパートナーでもあります。

マーレが特に貢献しているのは、ダウンサイジングエンジンの効率化です。ターボチャージャ、燃料噴射技術、可変バルブタイミング、排気ガス再循環、インタークーラなどの関連技術がうまく調和しているほど、効率は向上します。特別に設計されたマーレのダウンサイジングエンジンは、最大30 %のCO2排出量の削減に成功しており、その卓越した性能は技術的デモンストレーターとして裏付けられています。

アフターマーケット向け製品の体系的なラインナップ強化の一環として、マーレは目下、高性能で燃費効率の優れたディーゼル / ガソリンエンジン用に、ターボチャージャシステムの製品レンジの強化を図っています。また、マーレの革新的なターボチャージャ技術はディーラーや自動車整備工場でも活かされています。

特に重視されているのは、メルセデス・ベンツ、MAN、ボルボ、スカニアといったブランドのトラック向けのターボチャージャです。製品ラインナップは絶えず拡充し続けており、2012年までには乗用車向け製品も加わり、回転率の早い製品のおよそ70 %をカバーするようになります。出力75~1000 KWの各種サイズやタイプが幅広く用意されますので、乗用車、トラック、建設機械、農業機械用エンジンなど、さまざまな要件に最適なかたちで応えることができます。

回転数300,000 rpm以上、1,000℃を超える排気ガス温度など、極端な条件下で性能曲線の広範囲にわたり高効率を実現するためには、極めて高い開発能力と製造精度が求められます。

そこで、統合された開発プロセス全体で必要な熱力学的・熱機械的なコンポーネント特性を確保できるよう、マーレのエンジニアは初期の段階から最新式のシミュレーションツールを使用しています。例えば、タービンハウジングの耐久性を決定するために、熱機械的計算を行います。さらに設計と計算段階を経て、ターボチャージャは高温ガスベンチやエンジンベンチなど、数々のテストをこなします。そこで基準となるのは、熱力学的な特性曲線、シャフトオフセット曲線や製品寿命などです。

マーレ純正ターボチャージャは、グループ全体に適用される基準に基づき、ドイツとオーストリアの生産拠点で製造されます。ここでは、コンピュータ制御された最新の製造機械により、アルミニウムや鋳鋼製ハウジング部品の最高の加工精度が保証されています。例えば、高温耐熱素材で製造されているタービンは、優れた鋳物品質と正確なバランス調整を特長としています。このように、厳しい条件下での長期にわたるターボチャージャの耐久性が確保されています。

いわゆるフィールドバランシングにより、特定の稼働条件をシミュレーションし、動力学的なアンバランスを検出します。

シャフトとタービンホイールは異なる材料で製造されているため、これらの2つのコンポーネントを溶接で接合するのは非常に困難です。ところが、マーレのエンジニアはその解決法を発見しました。その手法とは、電子ビーム溶接です。これにより、非常に精度と信頼性の高い接合が可能となりました。

製造・プロセスエンジニアのチームは、ターボチャージャの製造で非常に高い品質基準を満たせるよう、高速機械加工、接合技術、液体や固形物によるコーティング、バランス調整など、製造、組立て、テストの各工程の開発を続けています。チームはその際、あらゆる既存の製品分野の広範囲に及ぶ生産能力を活用しています。

持続可能性に対する責任

環境保護の面でも、マーレは先進的な自動車部品メーカーの1つとなっています。マーレは、環境との調和のなかで技術的な進歩と人間の未来を発展させることを使命としています。そこでマーレは、各拠点でDIN EN ISO 14001認証を取得し、このコミットメントを明確に示すことにしました。リソースの経済的な配備やエコロジカルな生産工程だけでなく、マーレの主力製品も環境保護の面で最大限に貢献します。これらの製品は、燃費の向上と排気ガスの削減を実現するために世界中の数百万台の車両に搭載されており、生態学的バランスにも持続的にプラスの効果をもたらしています。

内燃エンジンの出力は、主に燃焼プロセスに供給される空気量に左右されます。そしてこれが、ターボチャージャを採用する理由となっています。ターボチャージャは排気ガスエネルギーを使用して吸気を事前圧縮し、より多くの空気量を供給することで、エンジンに供給される酸素が増加し、高効率の燃焼プロセスが実現されます。

ターボチャージャにより、最大トルクと最大出力が増加し(仕事量が一定のまま)、平均圧力が増えます。このために、コンプレッサなど、機械的な過給器を使用した場合に通常必要となるエンジンの機械的な駆動力は必要ありません。こうした改善に伴い、元のエンジンとほぼ同じサイズでよりパワフルなエンジンを組み込めるようになっています。このことはまた、近頃増えつつあるダウンサイジングコンセプトの実現にも寄与しています。このコンセプトでは、出力を代償にすることなく、燃費の向上とCO2排出量の削減が可能になります。

ターボチャージャは、タービンブレードまたはタービンホイール(赤)に高速かつ最大950℃の高温で供給されるエンジン排気ガスによって駆動されます。同様に、タービンホイールは同じロータシャフトに組み込まれたコンプレッサホイールを駆動します。それにより生じる回転の際に、コンプレッサホイールが吸気ダクトから外気を吸引し、そこからシリンダ(青)に空気が送られます。黄色のマークは、インレットからリターンパイプまでのオイル回路を示しています。